委員長(佐藤信秋君)
令和四年度決算外二件を議題とし、本日は締めくくり総括質疑を行います。
まず、私が決算委員長として総括的な質疑を内閣総理大臣にいたします。
令和四年度決算に関係するものとして、三問質問させていただきます。
最初に、GDPと国税収入の増加の要因につきまして、令和四年度決算は前年度に比べて、国税収入は四・一兆円増加しています。この理由についてはいろいろ考えられると思いますが、一つのデータとして、過去の輸出除きのGDPと建設投資を比べてみました。
資料一は、GDPや建設投資を比べたものです。平成二十三年度頃より令和三年度頃までの変化を見ると、輸出除きのGDPは約二十二兆円増えて、また、公表されている数字では、建設投資の増加はおおむねこれに近い数字になっています。そして、国税収入は四十三兆から六十六兆円に増えています。
つまり、この十年間は、国土強靱化事業で公共投資予算を二割程度増やし、同時に、民間も耐震化、再開発、リフォーム等で建設投資が増えて、GDPも増え、税収も増えたと考えたくなります。安定的、継続的、計画的に国土強靱化を進めてこの傾向を続ける必要があると思っています。
近年のGDP輸出除きと国税収入の増加要因について、総理の御見解はいかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
委員長から、GDPとそれから国税収入の増加要因について御質問をいただきました。
GDPの増加要因について、委員長から輸出を除いた名目GDPということで御指摘をいただきましたが、一般的に、内需を示す場合においては、この輸出から輸入を引いた外需をGDP、いや、名目GDPから除いた数字、これで評価することが多いようであります。これでいきますと、この同じ時期に五十九兆円このGDPは増加しており、建設投資は十三兆円の増加という数字になります。
また、税収につきましても、同時期二十三兆円増えたという御指摘ありましたが、これの中には、消費税の引上げ等によって十二兆円増えている、こういった要因も含まれているようであります。
分析については様々な数字があるようですが、御指摘のこの国土強靱化に対する投資、これが経済成長の一翼を担っているという点については御指摘のとおりだと思います。国土強靱化の取組、これ着実に進展をしています。また、大規模自然災害における社会機能の維持、あるいは迅速な経済活動の復旧に資する、これは言うまでもありませんが、あわせて、御指摘の我が国の経済成長の一翼を担っているという意義もあると認識をしております。
引き続き、災害に屈しない国土づくり、強力に進めるとともに、投資の拡大を更なる経済成長につなげていきたいと考えております。
委員長(佐藤信秋君)
ありがとうございます。
二番目の質問でございますが、現在、エネルギー基本計画の見直しに入っていると承知しています。
現行の二〇三〇年度におけるエネルギー需給の見通し、見直しは、その実現については多くの努力を要するものと思われます。特に原子力については、現状約六%を二〇%程度とする目標となっています。
資料二にあるような現在の世界先進国の原子力発電シェアから見ても、むしろ少ないとさえ言えるものでしょう。
昨年、GX脱炭素電源法が成立し、安全確保を大前提とした原子力の活用が定められたことを受け、どうやって原発の再稼働を進めるのか。まず、安全に運転できることとその信頼を国民からいただくこと、これは原子力規制委員会の大切な役割と存じます。そして、何よりも災害に強く、避難、退避も十分万全な体制を取り得ること、そして、影響のある近隣地域の地域振興が、原発あるいは水力発電ダム等があるがゆえに意欲的な長期的な明るい展望に満ちたものとなり得るよう種々の方策を講ずる必要があると思います。私は、この観点が、国も電力会社も不足し過ぎていると考えています。
まず、立地地域周辺への立地交付金等の規模、額が少な過ぎます。特に原発では、一原発当たり年間一千億程度の燃料費が節約になるというのであれば、もっと広い範囲の地域で多くの周辺整備に取り組めるようにするべきです。また、交付金の使い道も、ほかのインフラ補助金の地方負担等にも充当できるとか、根本的に地方の自主性を強めてもっと使いやすくして効果の発現を考えるべきです。
また、電力会社は立地地域周辺の電力料金をもっと安くすべきです。そして、企業立地を進めるとともに、例えば豪雪地帯なんかでしたら、その立地地域においては、積雪に負けない除排雪体制の整備だとか、さらに、企業立地やイルミネーションあるいはプロジェクションマッピングなどにも活用して、電力の立地地域は元気、活力あるとして、子育てしやすく移住者も増える、夢のある地域にするべきなんだと思います。
総理の見解を伺います。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
原子力発電について、幾つか委員長の方から御質問がありました。
まず、再稼働について御指摘がありましたが、この高い独立性を有する規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ地元の理解を得ながら再稼働を進める、これが政府の一貫した方針であります。
そして、原子力防災についての御指摘ですが、この災害時の原子力防災については、国として、関係省庁連携の下、この避難道の整備促進を含む体制の充実強化、これを図ってまいりたいと考えています。
そして、立地地域の振興についてですが、これまで電源立地交付金の使途拡大を進めるなど、立地地域のニーズに寄り添いながら、事業者とともに電力料金を安くするなど真摯に向き合ってきたところですが、これはもう引き続き、今後も政府一丸となって地域の声を丁寧に伺ってまいりたいと考えております。
今後も、地域が抱える課題に政府として真摯に向き合い、住民の方々にとって魅力ある、元気、活力のある立地地域となるよう、国としてしっかり支援を行ってまいります。
委員長(佐藤信秋君)
ありがとうございます。
それでは、三番目の質問、最後の質問です。
これは、コストカット経済からの脱却を図るための方策ということでお伺いします。
成長と分配の好循環、賃上げの実現、コストカット型経済からの脱却は重要な目標と思います。
政府調達について申し上げます。コスト、原価の計算が長い間積み重ねられてきた場合は、発注する人たちが昨年の実績を調べて、労務費や経費を計算して積算価格を定めて、これを予定価格として決めて競争入札にします。この積算価格以上では落札できません。例えば公共工事では、平均の落札率は大体九二、三%ぐらいでしょうかね。そうすると、人件費や会社経費を必ず昨年の実績より七、八%カットしなきゃいけないと、こういう問題なんですよ。これはまさしくコスト型経済、コストカット型経済そのものの成り行きなんですね、これね。
実は、世界中で、この積算価格を予定価格として、それ以下の価格でなければ落札できないようにし続けているのは、先進国では残念ながら日本だけになりました、ほぼ。明治以来の会計法ですから、今すぐ直すというのは難しいとは思います。だけど、これを直して世界の標準に近づけなくては、コストカット型経済というのがなかなか止まらないと、そんなふうに思います。
これからの政府の調達制度の在り方について、今すぐとは言いません、行く行く直すと、こういう方向だと思いますが、総理の見解をお伺いします。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
今御指摘の公共調達ですが、この関係法令にのっとり予算の範囲内で支出が行われるよう、あらかじめ定められた予定価格の範囲内で契約を締結しなければならない、こういったことになっている、こうした委員長の御指摘、そのとおりであります。
ただし、このことは、予定価格が適切に設定されること、これが大前提であります。よって、一つは、この予定価格の積算に最新の実勢価格を反映させなければならないということ、もう一つは、その後、価格が変動した場合、この契約変更に取り組むことができる、こういった点が重要であると考えます。
具体的には、その一点目、最新のこの実勢価格を反映させるという部分については、この公共工事においては、資材価格の高騰等を踏まえ、発注時には最新の設計労務単価や資材費等を用いた予定価格の積算を行う、このようにしておりますし、そして、契約締結後には、物価動向を踏まえて、スライド条項を用いた適切な契約変更を行うこととしております。
そして、これを徹底するために、本年五月に地方公共団体に対して、急激な物価変動を反映した適正な請負代金の設定等について入札契約適正化法に基づく要請を行うなど、これ広く地方公共団体に適切な対応を促しているところであります。
一方、この物品、サービスの調達においても、中小企業の受注の機会を確保する観点から、毎年閣議決定をしている国等の契約の基本的な方針において、最新の実勢価格を踏まえた積算に基づく適正な予定価格の作成について定めるとしておりますし、その後の変動につきましても、本年四月には、本方針を改定し、原材料費等の上昇や最低賃金額の改定等があった場合における契約金額の変更の検討など、これ適切に対応すること、これをこの方針の中で定めたところでもあります。
是非、こうした考え方に基づいて、経済情勢の変化に対応した政府調達となるよう、適切な対応を行ってまいりたいと考えております。
委員長(佐藤信秋君)
ありがとうございました。
それでは、以上で私の質疑を終わります。
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