自民党の国土強靭(きょうじん)化総合調査会(二階俊博会長)のプロジェクトチーム(PT)が、「国土強靭化基本法」の制定に向けた検討作業をスタートさせた。強いしなやかな国づくりへ向けた基本理念を示すもので、1カ月程度をめどに原案を固める予定だ。PTの座長を務める脇雅史参院国対委員長が、4日に開かれたPTの初会合後、報道各社の取材に応じ、今後の方針を語った。
――新法制定の狙いは。
「災害に強く、非常時・緊急時に強い国づくりを進める必要がある。ハード・ソフトを整備していくことになるが、個別事業分野ごとにやると整合が取れず、目的意識も不明確になりやすい。何をやって、何をやらないかを考える際に、まず理念を整理するべきだと考えた。どういう形になるかはまだ言えないが、30年、50年先に国民がどういう住まい方をしたらよいかということについて、社会的、経済的な意味からの検討を加え、方向性を出していきたい」
――強靭化に必要な視点とは。
「災害への対処が一番にあるが、さらに一歩進め、災害を受けない国づくりとして何をするべきか、というところまで発展していくのではないか。全く違う切り口で言うと、デフレからの脱却も図らなければならない。社会福祉にお金を割かなければいけないからと、安易に社会基盤整備予算を削ってきたツケが回ってきている。デフレ脱却には、必ず財政出動が必要になるが『何のためにやるのか』という理念がなければ駄目であり、その際に強靭化基本法が大きな意味を持つ」
「10年で200兆円(の規模)というような投資をすれば、必ずデフレは脱却できる。借金を心配する人もいるが、経済が成長路線に入れば返ってくる。借金におびえて財政出動ができなければますます悪循環に落ち込むばかりだ。当初予算がマイナスで、補正予算で増やすような対応では戦略的な整備はできない。10年なら10年で、どういうお金の使い方をするべきか原点から考えたい。今までの制度にこだわらず、良いものがあれば変えていきたい」
――住まい方に着目した理由は。
「人と人のつながりが希薄になってきており、独り暮らしのお年寄りが亡くなって数か月後に見つかるような事件も起きている。個人のプライバシーを大事にする方向ばかりに流れてきたが、集落をきちんと大事にし、住民同士が連携プレーをできるようにする必要がある。単に昔に戻すのではなく、新たな方向性として暮らしやすい社会とはどういうものかを考えていきたい。地域の集落を再生していくことを国民も望んでいるはずだ。国家としての大きな考え方を提示できればと考えている」
「集落の再生にはインフラと共に仕事が必要だ。農業や林業以外にも、交通の便や情報通信が発達したので、住んでいる場所とは違うところで仕事をするやり方もある。環太平洋経済連携協定(TPP)が議論されているが、思い返せば木材輸入の自由化で地域の林業をつぶし、地域の集落もつぶしていった。国産材に変えることは仕事を生み出し、集落再生の目玉になると思う。これまでは安いことがすべて善という考え方だったが、利益よりも大きな財産を失ったという思いがある。安さ至上主義からいい加減に卒業するべきだ」。