九州北部豪雨は、熊本、大分両県に加え、福岡県内でも久留米市など7市町が福岡県から災害救助法の適用を受けるなど、甚大な被害をもたらした。各県の建設業協会会員は、土砂の除去や陥没した道路に土のうを置いて通行できるようにするなどの応急措置に追われている。
大分県日田市の花月川や中津市の山国川は、3日に続いて14日にも再び氾濫(はんらん)した。大分県建設業協会の日田支部(原田安泰支部長)、中津支部(山崎弘彦支部長)とも、ようやく復旧作業が落ち着いたところでの災害に、気を休めることができない状況が続いている。原田支部長は、「会員65社が道路の復旧作業に追われている。重機のリースも追いつかない」と、状況を説明する。市内では、橋が落ちて孤立状態が続いている地区もあり、「『コンクリートから人へ』では安全・安心は確保できない」とため息をつく。
中津支部は、中津市の山国、耶馬渓、奥耶馬渓の各支所と連携して作業を進めている。このうち、山国支所管内では、通行止めになった市道19路線、農道5路線の応急措置を進めている。山国支所の井上栄吉農林建設課長は、「これまで6班体制で作業しているが、18日からは8班体制で対応する」と話す。
福岡県建設業協会は、県と災害協定を結んでいないため、各社が個別に対応している。久留米市と協定を結んでいる久留米市土木協同組合も3日から土砂の除去やバリケードの設置などに追われている。石井一朗事務局長は「市からの依頼は150-160件に達している。組合員73社で14日からの3連休も休まずに復旧作業を行っている」と話す。
オペレーター人員は手一杯
滝廉太郎の名曲「荒城の月」で知られる大分県竹田市では、九州北部豪雨によって2人の貴い命が奪われた。
大分県建設業協会竹田支部(友岡孝幸支部長)では、梅雨末期の集中豪雨に備え、大分県竹田土木事務所と対応を詳細に打ち合わせしていたが予想を超えた集中豪雨に見舞われた。
今回の水害は、市内を流れる稲葉川と玉来川の2つの河川のうち、玉来川が氾濫したことによる。竹田市は、過去に何度も両河川の氾濫による水害に遭い、稲葉ダムと玉来ダムが計画された。稲葉ダムは2010年に竣工したが、玉来ダムは、民主党政権になって検証が行われ、事業継続が決まった段階だ。友岡支部長は、「稲葉ダムと玉来ダムの2つが完成していたら安全が確保できたのに」と悔しさをにじませる。
JR豊後竹田駅前を流れる稲葉川は、濁流が勢いよく流れているものの、氾濫の後は見られない。川を渡って竹田橋南交差点を右折し、岡城バイパスに突き当たると、ブルドーザーで土砂の除去作業が行われており、水が引いた後ということが分かる。友岡支部長は、「玉来川からの水は、竹田支部が入居する建設会館の1m手前まできた。竹田土木事務所が入居する県竹田総合庁舎は床上10cmまで浸水した」と話す。
竹田支部では、各路線の担当会社で対応し、対応しきれない個所は支部で担当を振り分けている。ただ、「公共工事の減少に伴って各社とも人的なものを減らしている。特に、重機を動かすオペレーターが減っており、人員は手一杯の状況」(友岡支部長)という。16日の取材中にも、ブロック塀の撤去や植え込みの伐採などの追加作業の依頼がきていた。
玉来川は、集中豪雨に対応し、U字に蛇行した河川をショートカットして直線にも流れるよう改修している。今回の集中豪雨では、この蛇行した河川にも大量の水が流れ込んで氾濫した。JR豊肥本線沿いの拝田原地区では、線路の道床が流され、枕木と線路が宙に浮いている。道路では、地区住民が側溝にたまった泥を除去したり、家の中を掃除していた。大分市や佐伯市からのボランティアだという。
玉来地区から玉来川に架かる橋の手前では道路が陥没し、支部会員企業が重機による応急復旧工事を進めていた。友岡支部長は、「竹田市民が困っていることがあれば助ける。ライフラインの確保は建設業にしかできない」と誇らしげに語った。