公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の一部改正法案が29日、成立した。同改定法と一体で審議された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入札契約適正化法)と「建設業法」の改正法も同日成立。公共工事における受発注者の姿勢に大きな変化をもたらす可能性のある改正品確法だが、法律改正はあくまで変化のきっかげに過ぎない。何が変わり、何ができるのか。その意義を改めて検証するとともに今後の動きを追った。
「発注者責任とは何か」。公共工事の発注行政において長年問われてきた大命題だ。発注行政という行政体の背骨を過去も現在も貫いている信念は、「品質の確保」である。国民に提供する公共施設の品質を確保するために、最適な発注方式や施工管理の体制が考えられてきた。例えば、複数回にわたって国土交通省が改定した低入札価格調査基準価格も、引き上げの理由は「品質の確保」に尽きる。単品スライドやインフレスライド条項の運用も例外ではない。2005年に成立した品確法は、法律名のとおり、公共工事の品質確保が目的であり、その理念を法文化したものだった。
今回の品確法改正でも、品質確保を背骨とした信念は変わっていない。ただ、明記されているとは言い難かった品質を確保するために発注者が負う責務を規定したのが、大きな眼目と言える。従来の品確法では、価格と品質に優れた内容での契約、契約内容の透明性、競争の公正性、不正行為の排除、民間事業者の創意工夫の活用などが発注者に求められていたが、読みようによっては、これらを確保して会計法・予決令や地方自治法に従えば「受注者側がどんな状態であっても発注者には無関係」とも判断できた。
品確法改正でこの点が最も大きく変わる。発注者は、品質確保のために、「中長期にわたる担い手」を確保することが責務と明記された。発注者は、受注者側に担い手が確保されているかどうかを判断しながら、発注事務を行わなければならないのだ。担い手を損なわないために、適切な予定価格の設定や歩切りの撤廃、不調・不落が起きない方法の検討、計画的な発注、適正な工期の設定、適切な設計変更などを実施するよう明記した上、法律に「ダンピング受注の妨止」が発注者責務であることも明示した。「品質が確保されるなら安い方が良い」という考え方を否定し、「担い手側」に目を向けて発注のあり方を示した初めての法律の誕生だ。
さらに、インフラの老朽化対策という社会的ニーズに対応し、従前の新設偏重型ともいえる施設管理を維持管理まで含めた形に転換するため、「インフラ維持管理の適切な実施」も発注者責務として記載された。発注者自身が地域の公共施設を適切に維持管理するための最適な発注方式を設定するよう求められる。
発注者が「中長期の担い手確保」や「インフラの維持管理」を全うする道具として示されたのが、交渉方式や段階選抜方式、複数企業の共同受注などの「多様な入札契約方式」だ。発注者はこの中から、発注者の責務を果たすための発注方式を選び、行使する。
品確法改正がもたらすものは何か。公共施設管理者が、地域の担い手の状態に目を配り、地域の公共施設の管理状況を把握し、地域と国民に提供する公共施設の将来を自ら考え、最適な方法を自ら選び出していくという「能動的な地域・公共施設の運営」と言えるだろう。