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2022/2/25(金)
新聞記事
令和4年2月25日 建設工業新聞
建設工業新聞

業界
長年の要望が実現
賃上げ原資確保へ環境着々

国の公共土木工事の予定価格や低入札価格調査基準価格の算定に用いる一般管理費等率が引き上がる。低入札調査基準の一般管理費等率見直しは9年ぶり。建設会社経営の環境整備として業界が毎年のように要望してきた。3月からは公共工事設計労務単価や技術者単価も上昇する。国の公共調達全般で賃上げを表明する企業の優遇策が本格始動した状況にあって、国をはじめとする発注者には安定した経営環境の構築に対する理解とさらなる対策が求められる。

「地域密着型工事全般に影響する制度改正で、中小建設業の声が反映された結果だと思う」。一般管理費等率の引き上げを受け、全国建設業協同組合連合会(全建協連)の青柳剛会長はこう評価した。

全建協連は業界で率先し、政府に対し地域建設業の経営課題と改善を訴えてきた。2018年8月には当時の安倍晋三首相に直接意見を伝えたこともある。昨年11月24日に東京都内で開いた記者会見。青柳会長ら幹部は政策要望として、最低制限価格設定基準の一般管理費算定率を従来の「0.55」から共通仮設費や現場経費と同じ「0.9」に引き上げるよう訴えた。

この背景には全国的に本社経費が増えている状況がある。全建協連が例示したのは建設現場の生産性向上策i−Constructionの普及。これに関連した設備投資や研修会などの経費を賄う必要があるためだ。蔵谷伸一副会長は「会社、内勤の人への配慮が足りない」と指摘し、一般管理費等率の引き上げが「個人や企業への分配に結び付く」と述べた。

1月18日に都内で開かれた自民党「公共工事品質確保に関する議員連盟」(会長・根本匠衆院議員)総会。この時には財務省主導で賃上げ企業を総合評価方式の入札契約手続きで加点する施策が具体化し、業界には運用への不安が広がっていた。

日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)や全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)などオブザーバーとして参加した団体はこぞって賃上げ原資を確保するよう強調。積算基準の見直しや労務単価などの引き上げを求めている。

総合評価方式の賃上げ加点に関し、「賃上げ原資の確保が不可欠」と指摘する団体幹部や経営者は少なくない。

一般管理費等率の引き上げに伴い、19年に政府が決めた予定価格に対する低入調査基準の範囲(75〜92%)の上限が「ほぼすべての工事に適用される」(青柳会長)ことになり、受注価格が押し上がる。

労務単価・技術者単価の引き上げを含め、企業の賃上げを促す政策の厚みが増すだけに、焦点は「長期にわたる当初予算での安定かつ持続的な公共事業費の確保」(都道府県建設業協会首脳)に移る。岸田政権が掲げる「成長と分配」を建設産業でどう実現するか、今後の動きを注視する必要がありそうだ。