国土交通省は14日、公共事業の積算に用いる新しい公共工事設計労務単価と設計業務委託等技術者単価を発表した。労務単価は全国・全職種の単純平均で5.2%、技術者単価は全職種の単純平均で5・4%引き上げる。3月1日から適用する。労務単価の単純平均の伸び率が5%を超えたのは2014年度以来9年ぶり。国交省と建設業主要4団体が22年の賃金上昇率の目標に設定した「おおむね3%」を大きく上回る水準となった。
新しい労務単価は全職種の加重平均で日額2万2227円。最高値を更新し、法定福利費相当額の反映など算出手法を大幅変更した13年度単価以降、11年連続の引き上げを実現した。12年度単価と比較すると、全国・全職種の単純平均は65.5%上昇。特に今回の伸び率は直近の物価上昇率を超える水準となり、政府全体で推進している賃上げの後押しとなることも期待される。
公共工事で広く一般的に従事者がいる主要12職種(特殊作業員、普通作業員、軽作業員、とび工、鉄筋工、運転手・特殊、同・一般、型枠工、大工、左官、交通誘導警備員A、同B)の加重平均は日額2万0822円で、全国単純平均の上昇率は5.0%だった。
それぞれの単価には有給休暇取得の義務化分(年5日)に相当する費用、施工効率化などを踏まえた時間外労働の短縮に必要な費用を引き続き盛り込んだ。正確な賃金実態を把握するため、下請会社を通さず元請会社から技能者に直接支払われる手当の金額を新たに反映させているが、単価の押し上げ効果は軽微とみられる。
職種ごとの全国単純平均はすべてプラスとなった。コロナ禍を踏まえ賃金実態が前年度を下回った地域・職種の単価をそのまま据え置く特別措置を過去2年続けて講じていたが、今回は単価を引き下げる必要がある事例がごくわずかにとどまったことから適用を見送った。東日本大震災後に入札不調が頻発した被災3県の一部職種を対象とした単価の上乗せ措置も取りやめた。
単価設定の基礎データは22年10月の公共事業労務費調査で収集。有効工事件数は9932件、有効サンプル数は8万4609人。対象51職種のうち建築ブロック工はサンプル不足で単価を設定しなかった。
□技術者単価5.4%上昇□
3月1日から適用する新しい設計業務委託等技術者単価は、全20職種の単純平均で前年度より5.4%上がって日額4万4455円となった。過去10年で伸び率が5%を超えたのは初めて。11年連続の引き上げで、2012年度単価と比較すると40.4%上がった。
業務別の平均は設計業務(7職種)が5万3671円(前年度比7.1%上昇)、測量業務(5職種)が3万7700円(5.2%上昇)、航空・船舶関係業務(5職種)が4万0580円(1.5%上昇)、地質調査業務(3職種)が4万0667円(6.9%上昇)。20職種のうち日額が最も高いのは設計業務の「主任技術者」の7万4900円、最も伸び率が大きいのは9.0%上がった設計業務の「技術員」だった。
技術者単価は毎年実施している給与実態調査結果に基づいて設定。国土交通省が発注する公共工事のコンサルタント業務や測量業務など設計業務委託の積算に用いる。
今回の単価設定では、過去2年続けて講じていたコロナ禍を踏まえた特別措置を適用しなかった。20職種のうち航空・船舶関係業務の2職種は前年度の単価を下回る結果となった。
時間外労働に伴う割増賃金の算出に用いる「割増対象賃金比」は、設計業務の「主任技師」を除く6職種、測量業務の「測量助手」「測量補助員」の2職種、航空・船舶関係の全5職種で変更となった。割増賃金は、各単価を1時間当たりの額に割り戻した上で、時間数と割増対象賃金比を掛けて算出する。
□電気通信5%、機械設備工は7.8%アップ□
3月1日から適用する電気通信関係技術者等単価の全5職種の単純平均は前年度より5.0%上がって2万9220円となった。単価上昇は12年連続。職種別の基準日額は、電気通信技術者が3万4500円(割増対象賃金比67%)、電気通信技術員が2万3200円(67%)、点検技術者が3万4800円(68%)、点検技術員が2万6800円(68%)、運転監視技術員が2万6800円(68%)となった。
同日適用となる機械設備工事積算に関する標準賃金は、機械設備製作工が2万8300円(割増対象賃金比は未設定)、機械設備据付工が2万6800円(0.657%)。2職種の単純平均は前年度より7.8%上がって2万7550円となり、11年連続で引き上げられた。