2024/12/5(木)
新聞記事
令和6年12月5日 建設通信新聞
建設通信新聞

インタビュー
自民党国土強靱化推進本部長
参議院議員 佐藤 信秋 氏

強靱化実施中計
早急に大枠提示を
建設業は“地域の危機管理業”

自民党の国土強靱化推進本部長に就任した佐藤信秋参院議員は2日、日刊建設通信新聞社などのインタビューに応じた。政府が早期策定する方針を示す国土強靱化実施中期計画について、まずは大枠となる規模を早急に示した上で、具体の中身を詰める2段階で策定作業を進めるべきと指摘。2024年内にも会合を開き、政府への要望事項などについて党内の議論を深める考えを示した。

これまで本部長を務めてきた二階俊博元幹事長の引退に伴い、11月22日の自民党総務会で就任が決まった。「安全に暮らすためには災害に対応した力を国土全体でつくらなければならない」と国土強靱化の必要性を説く。激甚化する風水害や切迫度が高まる巨大地震など自然災害の脅威が増す中にあって、「(国土強靱化に対する)国民の理解も得られつつある」と受け止める。

国土強靱化実施中期計画の事業規模については、5か年加速化対策の15兆円という規模だけでなく、この間の当初予算の公共事業関係費や物価高騰分も踏まえて検討する必要があると提言する。「上積み分だけでなく全体で考えなければならない。そうしなければパフォーマンスが落ちてしまう」と説明し、こうした前提を共有しながら党内で議論をしていく姿勢を見せる。

議員立法の国土強靱化基本法は11年の東日本大震災を機に13年に制定された。死者・行方不明者が2万人を超える未曽有の災害を教訓とするため、「防災・減災、国土強靱化」を唱えた。「公共事業や建設事業をひたすらやりたいのではないかと疑われたりもした。そうではなく国民の安全・安心、生命や財産を守るためには何をすべきかということが一番の課題だった」と振り返る。

同法に基づき、国の指針となる国土強靱化基本計画や自治体による地域計画の策定が進んだ。ただ、当時の公共事業関係費はピーク時と比べ半分以下に縮小しており、計画に位置付けた事業を進めようにも「ドライブをかける手段がなかった」。そのため、18年から予算措置が講じられた3か年緊急対策が始まり、20年からは後継の5か年加速化対策が動き出した。対策に基づく取り組みは自然災害の被害抑制に着実に効果を発揮している。

地域の建設産業を「地域の危機管理業」と捉える。平時は本業の仕事をしつつ災害時は真っ先に駆け付けなければならない点で、同じく緊急対応に当たる自衛隊などとは異なるという。「だからこそ処遇改善を訴えてきた」と強調し、「(建設産業で)働く人に家庭を持ちながらしっかりと仕事をしてもらうという観点を忘れてはいけない」と警鐘を鳴らす。地域の守り手が今後も持続していくため、「地元の建設産業が頑張り続けるための方法を考えていかなければならない」と力を込める。