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2011/6/6(水)
国土強靱化基本法案
平成24年5月25日 建設通信新聞




国土強靭化へさらに一歩





自民党
政権公約の柱に位置付け
10年で200兆円投資 政調了承

自民党の政務調査会は5月31日の全体会合で、次期総選挙の政権公約(マニフェスト)とする「日本の再起のための政策」案を協議し、国土の減災・防災対策を強化する「国土強靭(きょうじん)化」を三つの政策ビジョンの一つに位置付け、民間投資を最大限活用しながら10年間の集中投資でインフラ整備を加速する方針を打ち出した。次回の全体会合で正式決定し、選挙政策の目玉の一つに据える。

「日本の再起のための政策」は三つの理念と三つのビジョン、七つの柱で構成。ビジョンの最初の柱に「国民の安全・安心が第一」を位置付け、国土強靭化基本法の制定など大規模災害への備えを明記した。

ビジョンの詳細を示す七つの柱の一つにも「復興の加速・事前の防災」を明記。将来の巨大地震・津波による被害を最小化するため、国土強靭化基本法に加え、「首都直下地震対策特別措置法」と「南海トラフ巨大地震津波対策特別措置法」も制定し、10年間の集中投資で徹底した事前防災と減災対策を実現するとした。首都直下と南海トラフの特措法案は近く公表する。

加えて北方、北陸信越、中国、九州などで太平洋側の経済的機能をバックアップする「日本海国土軸」の形成促進や、道路・鉄道のミッシングリンク(未開通部分)解消と港湾など交通網整備の推進、学校・公共施設の耐震化加速など国民の安全・安心に直結する社会資本の前倒し整備も掲げた。復興などに必要となる財源は民間投資を最大限活用すると明記した。

会合では、国土強靭化に10年間で200兆円を投じるとの方針について、「数字が独り歩きし、国民から公共事業のばらまきとも取られかねない」と懸念する意見も出たが、インフラへの投資は国土の安全・安心に加えて地域活性化、デフレ脱却などにも効果があるとの意見が続出した。

政調は同日の会合で出た意見を踏まえた改良案を次回会合で提示するが、国土強靭化はマニフェストに盛り込む方向で了承された。民主党も同様の趣旨の議論を進めていることから、法案は国会にすぐ提出するべきだとの意見もあり、今後調整に入る予定だ。

民主党
藤井教授にヒアリング
日本海側に4交流圏提案

民主党の「新たな戦略的国土地域政策を推進する議員連盟」(伴野豊会長)は5月31日に会合を開き、国内でいち早く「国土強靭(きょうじん)化」の必要性を訴えてきた藤井聡京大大学院教授を招き、その具体的道筋についてヒアリングした。藤井氏は、各地で巨大地震が懸念される中、列島強靭化には地方分散が必要だと強調し、日本海側に四つの交流圏をつくることを提案。そのためには国土全体の強靭化計画を議論した上で200兆円規模の財政出動を行う必要があるとして、「地方分散は地方分権ではなく中央集権の下で進めるべきだ」と訴えた。

藤井氏は、函館、金沢、和歌山、徳島などの都市が明治時代と比べて衰退したのは「新幹線が整備されなかったため」と指摘。新幹線を延伸することで日本海側に▽北方(北海道・青森)▽北陸・羽越▽中国・四国▽九州―の四つの交流圏をつくるよう提案した。

北方であれば、青森〜函館間の新幹線を早期に開通させるとともに、函館から札幌・旭川までも延伸。札幌のエネルギーを使って交流圏全体を活性化させることを提案した。5兆〜7兆円の投資があれば、四つの交流圏が整備できるとした。

財源については、投資先がなくだぶついた預金超過額が現在166兆円あるとして、これを借りて実体経済に注入すれば、金利を上げずにデフレ経済を緩和できると指摘。民間では借入額に限度があるため、政府が借りて大規模な財政出動を行うべきだと訴えた。

出席議員からは、藤井氏の主張に共鳴する意見が相次いだ。伴野会長は「公共事業という言葉は国民受けしない。言葉は言霊(ことだま)だ」と述べ、国土強靭化を推進するために夢や期待感のある新しい言葉を模索する考えを示した。