トップページ > 活動レポート > 日刊建設工業新聞(7月30日) 「国土づくり企画/震災後の国土づくり/インタビュー」




2012/8/1(水)
新聞記事
平成24年7月30日 建設工業新聞

国土づくり企画
インタビュー 自由民主党・参議院議員 佐藤 信秋氏


10年間で200兆円「国土強靭化基本法案」を国会提出

多極分散型が今後の欠かせない住まい方
公共投資で事前の備えとデフレ脱却を



公共投資の必要性から自民党が国土強靱化基本法案をまとめた。
公共投資削減一辺倒であった政治は果たして変わることができるのか。
自民党の佐藤信秋参議院議員にこれからの政策を聞いた。

――法案づくりのきっかけと経緯。

「東日本大震災から12日目の昨年3月23日、参議院予算委員会は国として何をすべきかについて参考人質疑を行いました。その時、京都大学の藤井聡教授は今こそ公共投資が必要であること、国土を”強くしなやか”にする強靭(きょうじん)化の展開などを指摘されました。強靭化をキーワードに頂き、わが党は同年10月、党内に強靭化特命委員会を設置し、今後の国土のあり方、国土の強靭化に向けたハード・ソフト方策の検討に取り掛かりました。週2回のハイペースで計38回の会合を持ったのです。首都直下や南海卜ラフによる大地震の切迫性も合め国土を考えた場合、なすべきこととは『復旧・復興』と『事前の備え』でありました」

「単に耐震対策、地震・津波対策だけでなく、あらゆる社会のセーフティーネットを視野に入れながら議論してまいりました。30年後、50年後という将来を展望し、どのような国土のあり方にしていくのか、議論から見えてきたのは多極分散型の国土形成が我々の大事な住まい方になることで、『致命傷にならないように備える』『早急に復旧ができる』『先に向かって動きだすことがすぐにできる』との観点が非常に重要だと分かり、国土強靭化基本法案の基本理念ができました。一極集中では致命傷を負いかねず、多極化による国土形成を図り、複数の国土軸を持つ構造にし、社会活動のすべてを持続可能な姿にしていかなければなりません」

「私は予算委員会や国土交通委員会で『雨の降り方がおかしくなっています』『大地震の発生率が高まっています。それに対する備えを万全にしてほしいです』と訴えて続けてきました。昨年の3月15日も質問の機会を得てこう訴えるつもりでしたが、その直前に今回の震災が起きてしまったのです。迫り来る大地震に対し、世界で最も脆弱(ぜいじゃく)といわれるわが国の国土にどう対応していくのか、それには公共投資をしっかりと積み重ねていくべきです。既存の社会資本の老朽化も目立っています。民間建築物の耐震強化促進政策も重要です。”コンクリートから人へ” という単純なスローガンで世の中をくくるのがいかに間違いであったかは明白です。生命と財産を守るコンクリートの大切さを言い続けてまいりました。現在のデフレ経済を助長しているのが公共役資の削減によることも指摘をしておかなければなりません。これら二つの点におきまして覚悟を持って対応しようとすれば、今こそ広い意味での公共投資が必要であることに尽きます」



――法案のポイントは。

「いつまでに何をするかといった目標水準が必要で、それ具体的に表そうとしているのが強靭化基本計画です。かつての全国総合開発計画でも10〜15年後を見据え、目標水準の達成を目指して積み重ねてきたのです。もちろん 、かかる費用をある程度見込まなければ意味がありません」

「基本計画の策定は、都道府県が国、市町村が都道府県の策定を待つのではなく、それぞれが”国民運動的”に打ち立てていくべきです。思いを同じくすることは多いと考えられますので、各者が方向性を集約させながら計画を作っていけばいいのです。事業を進めながら併せて目標となる水準を打ち出していく、計画ありきの議論にしてはならないことを申し上げておきます。集中期間(始めの3年間)だけにとどまらず、しかも民間建築物の耐震強化やソフト(情報通信、エネルギーなど)を合めたインフラ整備への運動を国民全体で展開していくことが大切でしょう」



――投資を見込む200兆円の根拠は。

「国と自治体が行う社会資本の新設・改良を指す一般政府公約固定資本形成は、ピーク時で年間約44兆円に上っていました。本来、国土を強靭化していくには現在の水準約20兆円に、さらに20兆円をプラスして40兆円程度を目標とすべれきところです。が、現在の水準約20兆円をベースとし、今後10年間で約200兆円という強靭化への官民合わせた投資額をわが党では考えました。無論、法案に投資額の記載はありませんが、裏付げが必ず問われますので、きちんと議論を進めておいたのです。ここでは、公的セクターが行ういわゆる社会資本整備だけでなく、建築物の耐震強化、情報通信や自然再生エネルギーなど民間投資を呼び込む投資も加えていく工夫は当然講じていかなければなりません」



――インフラ整備アレルギーが根強く残っており、どう説明していきますか。

「いざという時に備え、バックアップ機能を持ち致命傷を負わないようにする、すぐに生活基盤が回復できるようにすることに対しては、国民の皆さんに理解してもらえると確信しています。ただ、そうは言ってもそんなにお金をかけられない、費用に伴った便益があるのかという意見はあると思います」

「諸外国では費用便益だけで物事を決めていません。尖閣諸島のことを考えれば答えは明らかです。島の購入に費用便益は伴いますか、決じてそうではありません。国民の皆さんは容易に決断できるでしょう。国土を守る、領海を守るとの視点からすれば、必要性についてすぐに理解していただけると思います。極端ではありますが、典型的な例です。いざという時に備え国土を多軸的にするためのインフラ投資がベースにあるのです。日本海側の港湾から太平洋側に向けて輸送が機能した震災時の状況など、分かりやすい事例を交えながら丁寧に説明すれば必ず分かっていただけるはずです」

「併せて、公共投資の削減、民間投資の減少を一因とするデフレ経済から脱却しなければなりません。高潮や津波が押し寄せて危なそうだ、大雨が降れば堤防から水があふれそうだ、という地域に民間は投資しません。インフラを整備して従来に比べ安全性が高まって初めて、民間は投資するのです。公共が投資するから民間投資が誘導され、民間が投資するから公共投資も必要になり、双方をにらみながら事を進めていくべきでしょう」



――『税と社会保障の一体改革』の付則18条2項について、一部に誤解があるようですが。

「私は経済成長と事前防災、その両方をにらみながら消費税の問題を考えるべきとの持論を展開してまいりました。政府・与党の原案では名目成長率3%達成で税率を上げる一方、経済状況によっては消費税を停止すると記載されていました。これはおかしな話です。経済成長を促すのにどんな努力をするのか、税率アップの環境を整えるために何をすればいいのでしょうか。主体的な努力が国になければならず、切迫した大災害に備えるには付則の事項は必然です」。


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