2012/11/22(金)
新聞記事
平成24年11月20日 建設工業新聞


建設放談 ― 160 ―
森田 実(政治評論家)

佐藤のぶあき著
『「五強」防災立国論』が説く
東日本大震災が教えた日本再生への道






「誠は天の道なり、之を誠にするは人の道なり」
『中庸』

佐藤のぶあき氏(参院議員)の新著『「五強」防災立国論―東日本大震災が教えた日本再生への道』(産経新聞出版刊)を読んだ。「日本再生の方向を示す綱領的文書」だ。

「五強」とは「強い絆」「強いインフラ」「強いふるさと」「強いリーダーシップ」「強い制度」のことである。本書は、世界で最も脆弱な国土である日本列島で生きるわれわれ日本国民の生命と財産を守るために何が必要かを的確に示した良書である。

政治の究極の目的は、国民の生命を守ることにある。だが、人類の社会は戦争を繰り返してきた。日本は約70年前の第2次世界大戦において310万人の同胞の生命が奪われた。日本の歴史上最大の悲劇である。この悲劇的体験を経て、日本は平和国家の道をとることにした。この結果戦後67年間、戦争によって多数の国民の生命が奪われることはなかった。

だが、災害では多くの人命が奪われた。平和国家日本にとって「防災」こそは、政治の中心課題でなければならないのである。

本書の『「五強」防災立国論』は、わが国の防災の第一級の専門家でも政治家でもある佐藤のぶあき参院議員の集大成というべき書である。

本書は全7章よりなっている。

「第1章 災害大国」において「日本国民の生活が、極めて脆弱な国土の上に成り立っている」ことを明らかにしている。

「第2章 失われた国のリーダーシップ」においては、2011年3月11日の東日本大震災と菅直人民主党内閣の無責任な対応と、同政権の未熟さと構造的欠陥を解明している。防災立国日本を実現するためには政権交代が必要であることを痛感させられる。同時に、「国民の生命の安全」よりも「財政」を優先させた菅民主党政権の重大な過ちを鋭く指摘している。

「第3省 闘う被災地」においては、[大災害に立ち向かった自衛隊][消防の苦悩と犠牲][救援の道を切り開いた国土交通省の「くしの歯作戦」][全国の整備局から「テックフォース」が即時急行][職員をリエゾンとして派遣、首長のあらゆる要望を実現][地元建設業の覚悟と闘い][建設業界あげて支援を展開][市町村長の奮戦]など災害に対して先頭に立って戦った人々の苦闘と功績を高く評価している。同時に[国土保全を危うくする整備局の広域連合への移譲]について厳しく警告している。

「第4章 命を救ったインフラの防災力」において、防災のための社会資本整備の大切さを具体例を挙げて記述している。説得力がある。

「第5章 現場主義で国会を闘う」においては、著者・佐藤のぶあき参院議員の現場主義に基づいた国会活動を具体的に報告している。徹底的に被災地に寄り添った著者・佐藤のぶあき氏の誠実さが読者の胸を打つ。

「第6章 国土を守る建設産業を支える」において著者は、防災における建設産業の重要な役割を強調している。建設産業こそは防災立国日本の基幹産業である。

「第7章 防災立国論」において著者・佐藤のぶあき氏は「日本再生論」の基本方向を示している。その中身は、第1に「災害大国の国土に生きる覚悟」、第2に「日本再生へ『五強』(絆、インフラ、ふるさと、リーダーシップ、制度)で挑む」、第3に「カギを握る公共投資のあり方」、第4に「国土強靭化法案を提案」、第5に「防災立国でデフレ脱却」である。

本書は、佐藤のぶあき参院議員(元国土交通省事務次官)の血のにじむような体験に基づく第一級の優れた政治論である。全国民にとって必読書であると思う。