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2013/2/15(金)
新聞記事
平成25年2月7日 西日本建設新聞



業界の展望(上)
佐藤 信秋参議に聞く

国土強靭化基本法
10年、15年先を見据える







当初予算規模に匹敵する公共事業補正予算案が2月にも成立し、平成25年度公共事業予算案が4年ぶりの増額と見込まれるなど、建設業界の期待感は高まっている。だが、数年来の公共事業費削減で業界が疲弊。予定価格と設計労務単価はデフレスパイラル的に下がり続け、結果として若年入職者の減少を招いている。

このことは一時的な事業量増加だけで解決するはずもなく、中長期的に安定的な経営ができる環境づくりこそが、今強く求められている。鍵を握るのは、自民党を中心に検討されている「国土強靭化基本法」と「公共調達基本法」。建設業界の代表として国会で活躍している佐藤信秋参議院議員は、西日本建設新聞社のインタビューで「10年、15年先を見据えた国土づくりと、調達の根本を変える」と言明。2法の重要性と地域建設産業の今後のあり方を説いた。

補正予算は、経済再生と、切られすぎたインフラ整備、景気を刺激するカンフル剤と位置づけている。これまで主張し続けてきたことだが、財政・経済が傷んでいる地方に配慮し、地方負担分は国費で手当てする。

防災・減災と老朽化対策を柱に、迅速な発注を目指すが、建設産業界はこの3年でかなりリストラをしている。技術者や労働者、資材にしっかりと目配りしたうえで「円滑・迅速な執行体制」を確保するのが大事で、絵に描いた餅になっては困る。例えば硬直的に運用している技術者の専任配置など早急に検討する。

もう一つの問題が、予算が成立した途端に繰り越しになるということ。工期で縛られて、しっかりとした仕事が出せないのは困る。年度を跨いだ適正な工期設定など、使い勝手のいいものにしたい。もちろん年度内に出せるものは大急ぎで執行する。

本来ならば、公共事業予算は、毎年度当初に、中長期的な目標・計画に基づいて予算付けを行うべき。今回の補正も、自民党が昨年6月に提出した国土強靭化基本法案(継続案件)をベースに編成した。

強靭化法は、「強くしなやかに」を視点に10年先、15年先を見据え、中長期的な観点から国民の生命と財産を守るためのインフラ整備のあり方を明確化するもの。

南海トラフ地震では最大34万人が亡くなるという試算もあるが、地震は待ってくれない。だからこそ、被害を最小化するため効果的に何が出来るかを考え、地方分散化の視点からのバックアップシステム(拠点)について、前を向いた防災・減災を国民運動として理解してもらう。

例えば民間建築物の強化。公共建築物は今回の補正も含め、かなりの耐震化が進んでいるが、昭和56年以前に建てられた震度6強に耐えられない民間建築物が3割程度残っている。ソフトとハード両面から、官民が同じ方向性を持って一体となって強靭化に取り組む。インフラやネットワークの強化、エネルギーや情報通信など、いざという時の体制づくりが重要となるだろう。

熊本でも昨年、水害に見舞われて(国道57号)滝室坂が通行止めとなった。震度6クラスの地震や噴火も今後十分に考えられるし、大分や宮崎が地震の被害を受けたら、支援拠点とならなければいけない。物流・人流とも、今の状態では直接的に応援には行けないだろう。そういう意味では、熊本には、いわゆるミッシングリンクが多く残っている。ネットワークの整備・強化に大急ぎで取り組む必要がある。〈つづく〉