トップページ > 活動レポート(2013年) > 第2回公共工事契約適正化委員会(2月28日)
> 平成25年2月28日 建設通信新聞記事 




2013/3/1(金)
新聞記事
平成25年2月28日 建設通信新聞




建設論評
労務費上昇を好機に







2012年度第3四半期を終えてのゼネコンの決算状況が発表された。全般的に受注高の回復傾向が目立つ。特に民間建築の伸びが大きいという。今後は国の補正予算や次年度予算の効果も見込めるので、公共工事の受注も増加しよう。次年度の建設投資予測も久方ぶりにはっきりした増加基調だ。

だが利益予想となると一転して厳しい。特に民間建築市場での激しい受注競争の影響が大きく、さらに労務費などの高騰も加わり、採算悪化を招いているようだ。

さて、この「労務費高騰」と報じられる事態をどのように受け止めるべきか。「高騰」というと、印象的には異常な上昇にも感じられるが、果たしてそうだろうか。

最近の労務費について客観的なデータは手元にないが、高騰という表現は正しいのだろうか。本来あるべき水準に戻る過程に過ぎないのではないか。

もちろん個別に見れば、赤字決算予測に苦しむ企業もあり、足元の業績に厳しい影響があることは間違いない。

だがはっきり言えば、この労務費の上昇は、ゼネコン自身の行動の結果なのである。市場が縮小する中で、生き残りのためとは言え過度な価格競争に走った。いわばそのツケが回ってきた状態ではないか。

一方で技能労働者の不足は、建設業界の課題として急速に顕在化してきた。その対処法として職人や作業員層の賃金水準の底上げは不可欠だ。優秀な職長への手当支給の動きも同じ認識であったからこそ、生まれてきたはずだ。さらには社会保険への未加入問題なども、末端での賃金水準が上昇すればはるかに解決しやすくなる。

となれば、建設業界がとるべき道はあっきりしている。

いかにして受注価格にあらかじめ転嫁するか、つまりは発注者に妥当な価格を受け入れてもらうかだ。まず何よりも、これまでの価格一辺倒の競争環境を脱することに尽きる。

デフレ下の日本では、働く人の賃金も少なくなった。建設業に限らず多くの産業が、賃金を切り下げることで生き残りを図った。個々の企業としては正当化されても、社会全体としてはデフレスパイラルを長引かす一因でもあった。今ようやく日本経済に薄日が差し始めたようだ。賃金が上がることはよいことなのだ。この機に是正すべきことはきちんと正す。それが必要だ。

建設業界においても労務費は高騰したのではない。「正常化」したのだと発想を変えて見つめ直すべきだ。そんな認識のもとに、労務費上昇を労働力不足問題改善の好機としていく。そんなしたたかな動きをしていくべきだろう。

もとより建設需要が長期にわたり増加基調で続くとは思えない。労働力の適正水準も当然に見据えていくべきだ。官民が知恵を出し合っていくテーマだろう。(新)