2013/9/26(木)
インタビュー記事
平成25年9月26日 住宅産業新聞



政界インタビュー
「強靱化」で新しいふるさとを
福祉と住宅政策を一体で・・・








佐藤信秋自民党参院議員は「国土強靭化計画は単なる公共投資ではなく国土軸の多様化、新しいふるさとづくりにこそ意義がある。住宅政策について福祉政策との一体化を強力化させる時」と強調する。(文中敬称略)

――国土強靭化の議論に関する思いについて。

佐藤 強靭化に寄せる思いは皆それぞれあると思いますが、私は3つあります。1つ目は、分散型の国土について改めて見直すべきだということです。そこで大事な点は、拠点性、あるいは代替性を持った国土として、見直しを図るべきだということです。東京、大阪に集中している国土形成の在り方を、見直すべきだと本当に思っているんです。それは、国土軸の多様化であり、拠点を持つことで避難とか、救援とか、あるいはBCPPのように何かあるときに代替性を持たせようということで、そこが「ふるさと」にもなるわけです。いま、それぞれの地域を見た時、大きなブロック地域で多様な住まい方をしていて、そこでは過密と過疎もあるわけです。私は、そうしたものを克服していくには「故郷をここにして本当に良かった」というものを増やしていくことだと考えています。限界集落の話はありますが、住まい方として一定の土地のそうしたところに住んでいた方が安全・安心でもあるわけです。1年のうち、その場所に住む時期と、冬場は暖かいところに移り住むという2拠点を持つことも含めて、国土全体の拠点性、代替性を強める。同時に、その中での住まい方の工夫として、安全・安心という観点で住みやすくしていく―これがベースだと私は思っています。2拠点での生活ですが、例えば、社会政策、住宅政策として「地域包括ケア」といった考え方がありますが、そうした地域にある時期、住むといったことも、多様で総合的な考え方としてあると思います。

強靭化の2つ目は、ソフトとハードを一緒にしたものだという考え方です。公共投資だげではなく、公共投資と民間投資がコラボしてやってもらうところに意味があります。具体的には、エネルギー問題、情報通信の問題、街と建築物を強くすることにいきつきます。この3つを見ても基本は民間の投資であり、管理です。それに対して、どれだけ共同作業で公共投資と民間投資が一緒にやっていけるかが重要です。10年間で200兆円の投資とかいうことに大きな意味があるわげではなくて、どれだけの人が支え合うのかが大事で、新しい居住や福祉の在り方も作っていくわけです。

多一軸型の国土形成へ

3点目は、そうした考え方を計画、立案し、制度として目標を立て実行していくことです。例えば、この地域は耐震化率は今のところ70%だが、この10年以内に90%にしていきたいなどの目標を作ってもらって、予算、税制、制度・仕組みなどで応援していくということになります。

――「強くてしなやかな街づくり」の方向については。

佐藤 強靭化の議論から出てくるのは、街の在り方であるとか、住まい方であるとか、既成市街地のそれぞれに応じて、どんな使い方、どんな使われ方をするのかということになります。ただ、安全・安心というキーワードから見えてくるものは、電柱がないとか、便利で住みやすい中心市街地であるとか、安全な建築物に切り替わっていくとかといった都市のあり様が具体的に見えてきます。

「強くてしなやかな街づくり」のポイントは、第一は2地点居住など拠点がたくさんある多軸型の国土、第二がエネルギー、情報通信、建築物の3つの分野で民間の投資をどうやって引き出し、公共投資とバランスよくやっていくか、第三は、そうしたコンセプトを具体的な計画に落し、それぞれが目標に向かって着実に実施していく、という強靭化の考え方を踏まえて取り組まれることになります。必ず来るであろう大震災、さらに毎年、起こる風水害、最近では竜巻被害も顕著です。安全・安心で、国民がシッカリと進んでいけるような、そして子や孫に伝えていける地域であり、国土というものを着実に作っていく。そうした覚悟を決めて取り組むということです。

――日本の住宅事情の現状と課題については。

佐藤 かつては先進諸国から狭いウサギ小屋に住む日本人と揶揄されておりました。私自身は、その当時と出ベて、それほど住宅事情が改善されているとは思っていません。新潟の下町で生まれ、六軒長屋で生活してきましたから、日本の住宅事情の悪さというのは身に泌みて感じて育ってきた一人です。大事な問題として、住宅政策と取り組むべきだと思ってきたわけです。

具体的には、住宅政策は予算、税制、いろいろな制度で応援するということが大切になります。住宅関係予算というのは、かつては住宅金融公庫の融資戸数などが大問題で、私自身も予算の確保を一番に考えてきました。住宅政策の中で、直接補助というのは当時は難しかったわけです。今は、福祉政策と住宅政策の一体化が重要であり、サービス付き高齢者住宅の確保等に力を注いでいるわけです。これは予算の量の確保がなければかないません。福祉政策では、特養ホーム、グループホームといった国からの補助というのは削られてしまった。そこで、サービス付き高齢者住宅を、まだ額は少ないが展開できるようになった。福祉のほうからとらえても住宅はますます大事になる国内産業であり、重要な成長産業にしていくべきだと思っています。そうした点から考えると、新築住宅が安定的に必要で、100万戸を超えるような戸数を確保するような政策にしていくべきだと思っています。