2013/10/8(火)
インタビュー記事
平成25年10月8日 建設通信新聞




交渉方式「工事規模で判断しない」
応急と本格復旧は随意契約に

自民党参院議員 佐藤 信秋氏






建設業界で長年、ダンピング(過度な安値受注)と企業疲弊、職人の処遇悪化の要因とされてきた入札・契約制度を、国、地方自治体含め改善する動きが本格化してきた。大きなかぎを握るのが、公共工事品質確保促進法(品確法)の改正だ。改正法は新設だけでなく既存インフラの維持・修繕や災害対応を行う建設産業界の中長期的な担い手確保を「発注者責務」とするのが主眼だが、それにより建設業界はどう変わるのか。今後の改正法案づくりに関与し、影響力を持つ佐藤信秋自民党参院議員に聞いた。

*   *

−−品確法改正の主眼は

「建設業界は、地域の建設業を始め地域や日本の安全・安心を守る役割があるということに尽きる。だから今後もその役割を担っていける環境づくりをしなければならない。そのためには工夫して良い仕事をした企業には確実に利益が残る産業にしなければならない。これが業界で深刻化している人材確保・育成問題解決の前提条件である」

−−入札契約制度改革で本当に利益が確保できますか

「まず前提として、公共発注者が安ければ良いとして競争を強いるのは、受注企業にほかで利益を上げろと言っていることに等しい。その上で予定価格について言えば、官積算で100かかると積算したものが、ニアイコールとして予定価格(標準価格)となっている。ただこの標準価格は現実の上で、半分が(企業の応札価格と)合わなくなっている。これが予定価格上限拘束性のデメリットだ」

「だから結果的に標準価格(予定価格)以上を認めさせなければ、公共調達でありながらデフレを助長させることになる。つまり、官積算=予定価格をどう改善するかが今後の課題の1つである」

−−具体的な改善策は

「例えばこれまで官積算をしたことがない、また複雑な工事など、標準(官積算)では割り切ることが不合理と誰しもが認める公共工事が対象となる。要は、標準価格でどうしても収まらないものや標準価格以下では無理があるものと、標準価格で十分なものとを分けて考える必要がある」

「このことを糸口にして、品確法改正で対処するのも1つの考え方だ。また既に高速道路会社で導入を始めた、不調の原因を探って予定価格を引き上げるようにして、ネゴシエーション(交渉)で契約する動きもある。だから必ずしも標準価格が妥当ではない場合への対応を、改正品確法に盛り込むのだという考え方でもある」

−−技術提案・交渉方式が大規模工事だけでは地方業界には影響しませんが

「いや、地方業界が災害対応の担い手であるから改正法の主眼もそこにある。はっきりさせたいのは、建設産業界で問題となっている入札不調・不落は工事規模にかかわらず、公共・公益工事全体で起きているということだ。つまり、規模の大小にかかわらず官積算で何が足りないのか、(発注者と受注者双方が)互いに突き詰めて問題を解決していくことが、技術提案・交渉方式だと個人的には定義している。その意味で、交渉方式とは不調・不落対応方式であり、例えば除雪など地域の置かれた状況によって、交渉方式の内容についてもさまざまな選択肢があると思う。要は工事規模の大小にかかわらず、交渉方式は適用されると理解している」

−−災害対応の契約方式についても業界から問題視されています

「企業が応急復旧に対応した後の本格復旧時に、発注者が形式上の指名競争や一般競争入札にすることは問題であり改善が必要だ。具体的には災害復旧は、応急復旧と本格復旧をセットで随意契約にすることを検討したい」

「1964年新潟地震での被災者の一人としてその後も日本で起きた災害を踏まえて主張したいのは、“災害は忘れないうちにやってくる”ということだ。これまでも災害を乗り越えてきたのが日本の歴史であり、今後も乗り越えていかなければならない。そのためには、実際に災害対応を行う建設産業が活躍できる場を普段から用意することが大事だと思っている」

「その意味で今後想定される広域災害に被災した市町村や県に対し国が財政措置を行うことを明確にする、非常時法制の検討が必要となる」