2014/6/4(水)
新聞記事
平成26年6月3日 建設工業新聞



三位一体改正<中>
品確法・業法・入契法

課題解決ヘ多様な入札選択
発注者の意識も変える






「入札制度に百点満点の完成形はない」。公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)改正に関わった国会議員の一人は指摘する。

1990年代半ば。入札契約制度は、公共事業をめぐる不祥事と外国からの市場開放圧力を背景に、それまでの指名競争から一般競争入札へと大きくかじを切った。05年4月に公共工事品確法が施行されると、価格以外に技術的要素なども加味して落札者を選ぶ総合評価方式が広がった。

一般競争と総合評価方式を主体とする今の入札契約制度に対しては、「画一的、碩直的で時代のニーズや政策目的に対応できていない」といった指摘がある。

十数年来続いた建設市場の低迷で受注競争も激化。採算度外視の行き過ぎた競争がまん延し、業界の疲弊と担い手不足を招いた。

公共工事品確法、建設業法、公共工事入札契約適正化法(入契法)という今回の三位一体の法改正は「直面する課題に対して何をやらなければならないかを発注者自らが判断することで、振れすぎた振り子を元に戻す効果が期待できる」(自民党の国会議員)とみられている。

改正公共工事品確法では、入札契約制度に多様性を持たせ、「技術提案交渉方式」「段階的選抜方式」「複数年契約」「一括契約」「共同受注」などを条文に明記した。多様な万式を選択あるいは組み合わせることによって、公共工事の発注を直面する課題に対応しやすくする狙いがある。

例えば、規模が小さく採算が取りにくいとして敬遠されがちな維持管理工事はまとめてロットを大きくしたり、複数年契約を取り入れたりすれば採算性が高まる。適正利潤が得られれば、地域の安全・安心を守る地元の中小建設業者がインフラの「町医者」として活躍できる場が広がる。

多様な方式の中から最適なものを選択するのは発注者の役割だ。国交省は自治体の取り組みを後押しするための「モデル事業」にも乗りだす。課題解決に率先して取り組む自治体を公認。専門家を送り込むなどして支援する。モデル事業の成果を他の自治体に展開できる仕組み作りも視野に入れている。

多様な入札契約を公共工事品確法でうたう一方、入契法では、ダンピング受注防止策として入礼金額の内訳書提出を義務付け、見積もりなどの能力のない業者が最低制限価格で落札するような事態を排除する。

自民党公共工事契約適正化委員会の野田毅委員長(税制調査会長)は、三位一体の法改正で「安値で発注することを良いとする間違った風潮を改めたい」と話す。国交省の毛利信二土地・建設産業局長も国会審議の過程で、法改正によって「発注者の意識を変えていきたい」と繰り返し訴えた。改正入契法に沿って見直す入札契約適正化指針を自治体に徹底し、総務省とも協力して実効性を確保していく考えだ。

改正法で受注者が適正な利潤を得られる健全な公共工事市場を形成。それにより業界の持続的な発展と、インフラの大更新時代を迎える業界の担い手を確保する。そこに三位一体改正の最終的な目標がある。

多様な入札契約方式の概要と期待される効果

技術提案交渉方式
公募で技術提案を審査して選定した者と工法、価格等の交渉を行う方式。交渉を踏まえて予定価格を決める→受注者のノウハウを活用した調達を実現し、実際に必要とされる価格での契約が可能に
段階型選抜方式
競争参加者が多いと想定される場合に段階的に選抜する方式→受発注者の事務負担が大幅に軽減
地域の維持管理のための方式
複数年契約▽複数工事の一括契約▽複数企業の共同受注→ロットの大型化で採算性が向上し、地元中小業者が共同で受注しやすくなる。