2020/12/15(火)
新聞記事
令和2年12月14日 建設通信新聞

15兆円の新計画始動 国土強靱化5か年加速化対策を閣議決定
ミッシングリンク3割改善 流域治水、河川整備7割強
「災害に屈しない国土づくりを」

政府は11日、2021年度から25年度を計画期間とする「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定した。インフラ老朽化対策や高規格道路のミッシングリンクの改善、流域治水の推進など3か年緊急対策にはなかった新たな事業メニューを盛り込んだ。事業規模は民間資金や財政投融資の活用を含め、15兆円程度。中期的な予算の裏付けをもった抜本的な防災・減災、国土強靱化対策が始動する。

閣議に先立って開催した国土強靱化推進本部で菅義偉首相は、「省庁、官民の垣根を越えて、災害に屈しない国土づくりを進めるようお願いする」と関係閣僚に指示した。

新計画では、堤防強化やダム整備など災害対策に12兆3000億円程度、老朽化した道路や下水道などの補修に2兆7000億円程度をそれぞれ充てる。また、デジタル化の推進にも2000億円程度投じ、無人化施工技術の安全性・生産性向上などに取り組む。初年度は20年度第3次補正予算で措置し、22年度以降は各年度の予算編成過程で検討する。今後の災害の発生状況や事業の進捗状況、経済情勢・財政事情を踏まえ、機動的・弾力的に対応する方針だ。

対策の実施に当たっては、公共事業が円滑に実施されるよう、適正な積算の実施や工期の設定、国庫債務負坦行為の積極的な活用などによる施工時期の平準化に努めることを明記。公共事業に伴う自治体の負担軽減措置も講じる。


国交省所管は53対策9.4兆円

5か年加速化対策のうち、国土交通省の所管分野での対策は53項目となった。事業規模は全体の6割に相当する9兆4000億円をめどとする。

激甚化する風水害や切迫する大規模な地震への対応として、国や自治体、地元企業、地域住民などあらゆる関係者が連携してハード・ソフト一体となった事前防災対策を行う「流域治水」の取り組みなどを位置付けた。具体的には、戦後最大浸水に対応した1級河川の整備率を現状の65%から73%まで引き上げる。2級河川は近年の洪水に対応できる河川の整備率を62%から71%にする。

災害発生時のライフラインとなる道路ネットワークの整備も加速化させる。全国の高規格道路のミッシングリンク約200区間のうち、約3割で全線または一部区間の供用を開始する。暫定2車線区間の4車線化を進めるため、4車線化優先整備区間(約880キロ)の事業着手率を現状の13%から47%まで拡大したい考え。

老朽化対策は、都市公園や河川管理施設、道路施設、公営住宅、鉄道施設、港湾、空港、航路標識の各分野で目標を設定して取り組みを推進する。集中的に老朽化対策を実施することで予防保全型のインフラメンテナンスへの転換を促す。

強靱化対策を効率的に進めていく観点から、デジタルトランスフォーメーション(Dx)の推進を盛り込んだ。直轄土木工事でのICT活用工事の実施率(19年度実績79%)を5年間で88%まで向上。橋梁や砂防施設などコンクリー卜構造物でのICTを活用した出来形管理基準を5基準策定する。

工事の実施主体となる建設業の担い手確保を進めるため、国、都道府県、市町村の工事で建設キャリアアップシステムの導入も進める。


建設業団体トップがコメント

「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の閣議決定を受けて、建設業団体のトップがコメントを発出した。頻発・激甚化する自然災害に加え、コロナ禍という未曾有の感染症に直面し、安心。安全な国土づくりに対する理解と必要性が高まる中で、計画的な強靭化対策の推進には、当初予算での関連事業費の確保が不可欠との認識で一致している。


生産性向上の取組推進
日本建設業連合会 山内隆司会長

「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が、3か年緊急対策を上回るおおむね15兆円規模で閣議決定されました。ご尽力いただいた政府・与党の関係各位に心から感謝の意を表します。日建連としては、十分な施工余力を生かし、円滑な施工に方全を期するとともに、生産性向上に向けた取り組みを引き続き頭力に進めていきます。なお、必要なインフラ施設の整備を計画的に進めるとともに、建設産業において人材の確保・育成、資機材の調達などを将来の見通しをもって計画的に行っていくためには、当初予算における予算措置が不可欠であることから、2022年度以降は当初予算において所要額の措置がなされるようお願いします。


事業執行に万全期す
全国建設業協会 奥村太加典会長

「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が閣議決定されました。3か年緊急対策から事業期間、親模を大きく拡充し、その内容も人命・財産を守るための対策のみならず、交通ネットワークの強化やインフラの老朽化、デジタル化の推進による安全性・生産性向上、建設業の担い手確保などに至るまで、幅広く拡充されています。大変なご尽力をいただいた国士交通省を始め、政府・与党の皆さまには心より感謝を申し上げます。
私どもは会員企業の施工能力を生かし、事業の執行に万全を期していきます。なお、2022年度以降は、防災・減災、国土誼靱化の取り組みを当初予第における特別枠での計上をお願いします。


公共投資で景気下支え
全国中小建設業脇会 土志田領司会長

「防災・減災、国土弾靱化のための5か年加遠化対策」の閣議決定により、地方自治体が集中的に実施している防災・減災、国土強靱化のための対策や老朽化対策に道筋をつけていただき、政府・与党の関係各位に心から深く感謝します。
新型コロナウイルス感染症による景気下振れや国土強靭化に対処するため、公共工事の資材調達に大きな支障はないこと、人手不足などの施工能力に問題がないことから、2020年度第3次補正予算及び21年度当初予算の編成においては、人材確保・育成、資機材の調達などに見通しをもって計画的に行うことにより景気の下支えになるため、大幅な公共投資を機動的に実施していただぎたい。