2022/2/14(月)
新聞記事
令和4年2月10日 建設工業新聞
建設工業新聞

業界、選択肢拡充を評価
異例の短期間で運用見直し

賃上げ企業を総合評価方式の入札契約手続きで加点する。岸田政権が掲げる「成長と分配」の実現に向けスタートした看板施策は、異例ともいえる短期間で運用を見直す事態になった。柱は加点基準となる賃上げ実績の評価方法の拡充。建設業界からは経営負担の軽減に配慮した速やかな対応に対し評価する声が広がっている。ただ依然として施策自体に不安を抱える関係者も多く、柔軟かつ丁寧な運用が求められる。

「賃上げ実績の選択肢が増えたのはいいこと」(全国元請団体幹部)、「企業の弾力的な対応を示したもので前向きに受け止めている」(ゼネコン関係者)。業界関係者は異例の早さで運用見直しに踏み切った政府の対応を相次ぎ評価した。

2021年12月17日の財務省通知。総合評価方式の入札で賃上げの加点評価を受けるには大企業で給与総額(1人当たり平均の給与額前年度比3%以上)、中小企業なら総人件費を年1.5%以上増やす目標を設ける必要があった。

今回の見直しでは各社の実態に合わせ、基本給や所定内賃金、継続勤務従業員の平均賃金も選択できるようにした。

特に公共士木工事を主力にしている業者が多い地域建設業の関係者には安堵(あんど)が広がっている。東北地方の団体幹部は「スピーディーに対応してくれた。地域建設業の立ち位置で全体を見てくれたことに感謝したい」と強調。東海池方の団体関係者は「(大手寄りとの印象を持っていた)当初に比べ中小企業にも目を配った運用だ」と指摘する。

業界の声を受け止め、財務、国土交通両省との折衝に当たった自民党「公共工事品質確保に関する議員連盟」(会長・根本匠衆院議員)の幹事長を務める佐藤信秋参院譲員に謝辞を述べる声も多い。

一方で今後の制度運用に依然として不安を抱える関係者が多いのも事実だ。運用見直し後も加点基準の3%〜1.5%以上という賃上げ幅は変わっておらず、経営に与える負担の大きさは実質的に変わらないとの見方もある。

九州地方の団体関係者は「問題になるのは会員でも日給月給の職人を抱えていること。仮に日給を上げても、月給や年収べースで1.5%上がるかは工事量が左右する」と指摘する。

多くの関係者は異口同音に賃上げ原資として、公共工事量の安定的な確保や公共工事設計労務単価などの引き上げも必要と訴えている。