国務大臣(前田武志君)
特に、東日本のこの復興段階においては、先ほど来の議論にありますように、地元自治体等においても相当その機能を毀損したり低下した中で立ち上がってくるわけですから、ある意味流用性というものもある程度指示、指示というわけじゃないんでしょうけれど、こういうことに注意をしなければならないよというようなことが必要だろうと思います。それはもう委員の御指摘のとおりでございます。
そういう意味では、この社会資本整備総合交付金と一括交付金が車の両輪となってそれぞれの特性を十分発揮していくことが重要であろうと、このように思います。
佐藤信秋君
是非、元に戻す方向とは言いませんが、社会資本整備総合交付金的に、政策目的をしっかりして、どこがどれだけ必要だと、目標をこうしようというような形でやれるように、これはもうお願いを申し上げておきます。
そして、実は、先週ですか、十月の二十一日か、いろいろ地方支分部局、地域主権改革の推進等で、閣僚懇でいろいろ総理大臣からもお話があったと伺いましたが、出先機関の改革という議論、これが今度の大震災あるいは水害、台風、こうしたことを踏まえますと、私どもはこれまでも根幹的な施設の整備であるとか、あるいは災害に対する手当て、復旧であるとか、あるいはまた広域的な行政としてという観点からいくと、出先機関を安易に廃止したり、あるいは、広域連合ですか、等に委譲すると、こういうことは、実は、実験としてやってしまって後でしまったということになっても困りますよねと、つくづく、前からずっとそう申し上げているところであります。
先ほど来の質疑の中でも、東北の整備局、今回の大震災でいえば東北の整備局、くしの歯作戦で実にしっかり活躍してくれたとか、あるいはまた知事さんたちにしてみますと、やっぱりいざというときには直轄頼りという部分があって、たしか宮城の知事が発災後しばらくして、海岸の防災対策といいますか、防潮堤等について直轄でやってくれないか、あるいはまたこの前の新潟、福島の水害では福島の知事が、河川の改修等について県でやっていた部分というのが、これはちょっと、まああれだけ災害が原発も含めて多発しますともっともなところがあるんですが、とてもとても自分たちの力ではできないので、やっぱり直轄でやってくれないかと、こういう御要請があったと。それで実際、事務委任というような形でやるんだというふうにも聞いております。
それから、台風十二号でいえば、土砂ダムと言えばいいんでしょうか、あれの扞止等について、やっぱりこれは広域で災害をしっかりと防御していこうと、事前も事後も。こんな観点からいくと、それはなかなか県、市町村の単位で、もちろん市町村はそうですが、県の単位でというのはなかなか難しいところがあるんだろうなと。
この平成になってからですよね、激甚災害、本激と言われる激甚災害、去年までに八件ですか、なんですね。つまり、広域で大変な被害を被る災害、今年はもう三件も出て大変な状態になっているわけですが。そういう意味では、一つの県で大体十年に一回とか二十年に一回とかいうような、本当の意味での大災害といいますか、はですね。
そうすると、どういう現象が起きてくるかといいますと、災害の発生当初はどうしていいか分からないというのが結構多いんですね。担当している人は十年前、十五年前ですから、そうすると、災害の救助から始まって復旧復興に向けて、こういうのが、制度の仕組みをどう運用していけばいいか、何をまずやればいいかというような辺りが最初の勉強課題になって、あっという間に二日、三日あるいは一週間たってしまう。
それから、実際に具体の復旧に向けてという作業をしていこうとすると、更にそこから時間が掛かってというような部分もありますから、どうしても遊軍的に、さっき大臣、テックフォースのお話もなさいましたが、全国でとにかくどこかで災害が起きる、そうしたら、常にそれを自分たちの組織のものとして、こういうことも実は大事な問題なんですね。
そうだとすると、そういう大災害に備えて、あるいは復旧に向かって、あるいはまた基幹的なネットワークといいますか、そんなことをきっちり整備し、管理していく、こんなことを考えますと、出先機関の安易な廃止等、あるいは移譲という形で言われているのかもしれませんが、広域連合への移譲と、こういうような形で、先週、閣僚懇でお話あったようですが、これはやっぱりよっぽど慎重にといいますか、むしろもっとどう活用していけばいいかというような観点から出先機関の問題は考えていくということも必要なんじゃないかと思っておりますが、ここは御所感といいますか御所見といいますか、大臣あるいは松原副大臣、どちらでも。
国務大臣(前田武志君)
多分ここは私がお答えした方がいいかなと、こういうふうに思います。
もちろん御承知のように、出先機関の移譲であり組織改革というのは、例の平成二十年の八月に出ていますね、当時伊藤忠の会長をされていた、誰だったですかな、(発言する者あり)えっ、違う違う、何とか宇一郎、丹羽宇一郎さんの委員会で答申を出されて、それが一つの方向付けになっているわけですね。それで、政権も交代して、いよいよ閣議決定の上、二十四年度に法制化するというところまで来ております。それが今の状況ですね。
私は今、委員が御指摘のように、この直轄の組織の実力部隊ですから、この頼りがいというのは大変なものがあります。東日本大震災における東北地整を中心とするあの活躍。しかし、それは東北地整のみならずテックフォースにしても、全国の地方整備局がそこにサポートをしてのオールジャパンの結果なんですね。そういう点からいうと、私はオールジャパンの、何といいますかね、神経中枢的なそういう組織は必要なんだろうと思うんですね。地方整備局というよりもオールジャパンの危機管理、この社会基盤のインフラの危機管理的なオールジャパンの制度と。
それからもう一方で、これをどのように生かしていくかという観点からすると、地方整備局があり、府県の土木部があり、そして市の建設部だとかいうのがあり、重層構造になっておりますが、実は御承知のように、相当空洞化してきていますよ。市の建設局、府県の土木部がどれだけかつてのピークのときのような資源を集めてやっていけるかというと、どんどん人口も減っていく、働き手が減っていく、そういう中でまさしく維持管理、更新の時代ということになると、その地域に合った施設というものの整備というものをやっていかなきゃいかぬし、あるいは、よく言われるように、道路だってその地域に応じたような道路を造るだとか改修するだとかいう時代になってまいります。そうなってくると、やっぱりブロック単位ぐらいで、この地方整備局の持っている実力というものがブロック単位でなければこの地域の本当の地域主権、何といいますか、地方分権といいますか、こういったものがなかなか進まないんじゃないか、大変なことになるんじゃないかということすら私は感じております。
一方、この地方整備局の組織というのは、もう委員十分御承知のように、明治時代の交通、通信、不便な時代につくった組織ですね、この実力集団というのは。今もずっとそれを踏襲していて、今のこの時代においては必ずしも全部そこを、現地に全てを持ってなければ国土交通行政というものが責任果たせないというわけではない。ブロック単位で本当に広域的なものがあるなら、むしろそれが自治体というような、自治というような格好であるならば、自治は経営体でございますから、要するに、民間も含めてあらゆる資源を取り込めるはずですよね。いわゆるPPPというようなのもその一つの手法だと思うんですが。アカデミーも建設業界も、それからもうあらゆる流通も含めてそういう民間の資源というのを取り込んでやっていくと、先ほどの社会基盤に割く財源が減っているというようなことも解消されて町づくりそのものが非常に大きな観点から、やっぱり国土交通省という国の組織であれば、もちろん法制度等からいって縦割りで封じ込められておりますが、そこが非常に大きな力が発揮できるのではないかというふうに思っている次第であります。
佐藤信秋君
今のお話から伺いましても、いや、多少私の勝手な思い込みの部分があるかもしれませんが、地方全体のブロックの在り方、道州制であるとか広域連合、きちっとしたものが意思決定の仕組みも含めてできてからとか、多分出先機関だけをどこか実体のないところに移譲というのは、またこれも異常なお話に近いんじゃないかと思いますんで、そのように、大臣の意見もそうだというふうに私自身は理解させていただきます。
地方全体のブロックの在り方とか、そうしたことを踏まえた上で出先機関をどうしていくかと、こういう議論でないと糸切れだこになってしまう、行き場がない、こういうことになりかねないんで。
あっ、副大臣、一言あれですか、御意見があればお願いします。
副大臣(松原仁君)
今大臣からの御示唆もいただいて申し上げますと、今委員おっしゃった部分を含め、しっかりとした受皿の制度設計に向けての課題、多くの課題がありますが、やはりそれをきちっと解決するということをしながら新たな広域行政制度についての議論に積極的にかかわっていき、結果として今大臣がおっしゃった方向に進んでいきたいと、このように思っております。
佐藤信秋君
ということで、受皿づくりといいますか道州制等の議論をしっかりした上でというふうに理解をさせていただきます。
そこで、東日本大震災、建設産業が、先ほど来のお話でも地元の建設業が随分頑張っていただいている、なかなかこれが表に報道されることは少ない。確かに、すぐに出ていってその翌朝ですから、十一日の晩から招集して翌朝既に作業を始めているというような人たちが、十二日の朝ですね、早朝から、こういう方々が多くて、しかも自分たちのそういう活動している写真というのはなかなか撮らないんですよね。報道陣もまだ来ていない、自分たちの写真も撮らない。というようなところで広報に欠けているという面があろうかと思いますが、残念ながらそうしたいかに地元の建設業の人たちが活躍しているか、この報道がなかなか少ないという面はあるんですが。
もう一つ、実は現地に行きますと、いや、あと五年後だったらこれできなかったよと。つまり、建設産業が疲弊し切っていて今除雪なんかがなかなかできないというのが全国的にかなり出てきているんです、機械を売り払ったりしているものですから。これは多分奥田副大臣も御存じの話だと思いますよ。いいです、いいです、時間がなくなりましたので。
そこで、大変な状況だというのが、資料の五にも労務単価のお話をこれ載せさせていただいたんですが、平成九年度に比べると二十二年度、労務単価が平均で三割減なんですね。こんなに安くなって、しかも、実はこの一万六千四百七十九円と、年間何日働けるかと、こういう議論からいくと、二百日働けるかどうかと、こういう議論でありますから、ベテランの大工さんたちでも、あるいは熟練した基幹技能士さんたちでも三百万とか、前後と、こういうふうなことも多いと。建設産業の疲弊という問題が大変な課題でもあるわけであります。
そこで、時間がなくなりまして途中質問省略させていただいて、安ければいいということではない、いいものをしっかりつくっていただいて、そして地元の、地場の建設産業が頑張れるような環境づくりということをしていかなければいけないでしょうと。そのためには、今の公共調達の入札制度をいろいろな観点から変えていく必要があるんじゃないかと。
特に、これは前に池口先生が副大臣のころにも伺いました。積算とか予定価格というのは、これ何なんでしょうと。標準価格なんですね。百円掛かるという積算で、標準はそうだけど九十円で済むときもあるし百十円掛かるときもあると。そうした面からいきますと、予定価格の上限拘束を外すと、こういう問題も含めて、今超党派で参議院の場合には勉強会を、議連をさせていただいているわけですが、この公共調達制度の適正化を図るべき、こういう時期に来ているんではないかなと。これだけ建設産業が疲弊してきますと、一生懸命したら、工夫をしたら少しは利益が残ると、残すことができるんだと、そういうようなことが発注者としての大事な責任じゃないかと、こんなふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(前田武志君)
御指摘の面については、最低価格制度なんというようなのを、最低制限価格ですか、こういったものを設定したりして、そこで集中して何かくじ引で決めるだとか、結果としてはデフレスパイラルをやっているみたいなもんじゃないかという御指摘なんだろうと思うんですね。私もそう思います。地域の優良な建設会社というのが実は維持更新して、社会シバンのお守り役をやってくれているわけですから、これは、東北震災においても、十二号台風等においても、まさしく即座に来ていただいて対応していただいた、まあ、もちろん協定を結んでの上の話なんですが。
ということで、品確法なんかを随分やられたのは何とかそういうものを解消しようということであったんでしょうが、現実はなかなかそのとおりにならないということで、今超党派的にこの面について、そういう優良な地域の建設業者そのものが存続し得るようなというよりも、本当にこの地方分権の時代、災害に強い国づくりという時代にその役割を演じてもらうような発注の在り方というものを是非御提言をいただいて、私どももそれを何とか前向きに進めてまいりたい、このように考えております。
佐藤信秋君
ありがとうございました。方向を同じくしてというお話でありますし、超党派である程度早急にまとめたいと思っておりますが、また御提案申し上げて、それで内閣としてお引き取りいただくということもまた可能であれば是非お願い申し上げたいと思っております。
最後に、済みません、ほかにも多くの質問を用意して、申し訳ありません、準備もしていただいて、時間がなくなってまいりましたので、多分これが最後の質問になるかと思いますが、資料の六を御覧いただければと思います。
実は、この大震災もそうなんですが、マグニチュード九・〇というような地震が起きるとは考えていなかった。これは今世紀に入って初めて、いや、今世紀じゃないですね、日本が成立してから初めてぐらいの大変な大きな地震でしたねと。ただ、過去に東海、東南海、南海あるいは首都直下、そして東北太平洋、連動して地震が起きてきたことが四回もあるから、またこれも気を付けなきゃいけませんよというような御議論を今朝も京都大学の藤井聡先生から伺ったところでありますが。
水の降り方の変化というのが私、大変気になりまして、これが資料の六なんですが、全国の平均の降水量は減っているんですね。統計を取ってみますと、百年に百ミリ減っているんです。それがこの資料の六なんですが。
それで、分散を出してもらったんです。この分散が実は増えているんですね。ですから、大ざっぱに申し上げれば、百年前は千六百ミリプラスマイナス三百五十ミリぐらい、経年変化がですね。三百五十じゃない、プラスマイナスでいうと二百ぐらいでしょうか。今千五百ミリぐらいになりましたから、プラスマイナスが倍ぐらいになっているんですね。つまり、年度のばらつきと地域のばらつきと雨の降り方が随分広くなっている。だから、今回の水害台風でも連続雨量で一千ミリ、計算によっては大臣の御地元辺りで二千ミリ、連続雨量で。これは一年分が全部降るんですね。そして、時間当たりでいきますと、百二十ミリ、百三十ミリというのがどんどん出てきているんですね。百二十ミリ、百三十ミリというのは、バケツをひっくり返しても間に合わないぐらい。
こういうのが例えば東京に来たら、八ツ場に来たら、群馬に来たら、こういうのが実はこの雨の降り方の異常さからいっても、八ツ場ダム、利水と治水を同時に考えると、これ両方考えなきゃ駄目なんですね。渇水のときはひどいですし、降るときはまた極端だ。こういう議論からいくと、是非八ツ場ダムの見直しを早く再開していただかなければ、これが多くの知事たちの、関係する知事たちの思いでもあり、また県民、都民の思いでもあるということを踏まえまして、大臣、いかがでしょう、早期再開につきまして。
国務大臣(前田武志君)
東日本大震災の教訓というものを社会資本整備審議会において導き出してくださいました。随分と議論を重ねていただいたようでございますが、災害に上限なし、そして命第一という二つの方向を示してくださったんですね。
今委員御指摘のことは、雨そのものは減っているということは、多分こういう施設計画をやる場合の確率洪水と、やれ二百年に一度だとかいう、その量自体はそんなに増えるというよりもむしろ減るかも分からない。しかし、一つの雨というのはとんでもない大きなものが来るよと、そういうものは計画論の中に余り反映されていないじゃないかという御指摘だと思いますね。
そういう東日本の体験も踏まえて、災害に上限なし、命第一ということで、国交省の中に事務次官を長とするタスクフォースを設置していただきまして、これは河川局とは遮断しております。その教訓をどう受け止めて、その受け止めた資料を有識者委員会の方に提供して、有識者委員会が最終的に評価をしてくださるわけでございますから、その評価資料として災害の東日本の教訓に基づく資料を提供しようと。
今の御指摘もその一つかなというような感じがいたしますので、事務方を通じてそのタスクフォースの方にこの資料を提供させていただきます。
佐藤信秋君
時間が参りましたのでこれで質問を終わりたいのでありますが、大臣には是非このそれこそ未曽有の危機的状況の中でしっかりとおやりいただけるということを期待申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
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