国土交通省は16日、公共事業の積算に用いる新しい公共工事設計労務単価と設計業務委託等技術者単価を発表した。労務単価は全国・全職種の単純平均で5・9%、技術者単価は全職種の単純平均で5.5%引き上げる。いずれも前年度を上回り過去10年で最大の伸び率。労務単価は都道府県別・職種別で1000以上ある単価のすべてがプラス改定となる。業界を挙げての賃上げや、価格転嫁の円滑化への働き掛けが実を結んだ格好だ。新単価は3月1日から適用する。
新しい労務単価は全職種の加重平均で日額2万3600円。最高値を更新し、法定福利費相当額の反映など算出手法を大幅変更した13年度単価以降、12年連続の引き上げを実現した。12年度単価と比較すると、全国・全職種の単純平均は75.3%上昇した。
今回の伸び率は直近の物価上昇率を超えるとともに、国交省と建設業主要4団体が23年の賃金上昇率の目標に設定した「おおむね5%」を労務単価ベースで上回る水準となる。
公共工事に従事する現場労働者の8割以上を占める主要12職種(特殊作業員、普通作業員、軽作業員、とび工、鉄筋工、運転手・特殊、同・一般、型枠工、大工、左官、交通誘導警備員A、同B)の加重平均は日額2万2100円で、全国単純平均の上昇率は6.2%だった。
時間外労働の罰則付き上限規制が4月に適用されることを踏まえ、それぞれの単価には上限規制に対応するために必要な費用を反映。同様の措置は2年前から講じているが、適用を目前に控え建設各社で準備が進展している状況をより考慮したという。急激な物価上昇を背景に支給事例が増えている「インフレ手当」も正確に把握するなどして、現況の賃金実態をより適切・迅速に反映させた。
国交省は単価改定を踏まえた建設各社の賃上げを強く呼び掛ける。今国会で改正を目指す建設業法をはじめとする「第3次担い手3法」では、労務費ダンピングを規制し賃金の行き渡りを担保するための法的措置を講じる予定。単価引き上げが賃上げに結び付き、次なる単価引き上げにつながるという好循環が持続する産業構造への転換に向け、官民それぞれの立場でより一層の努力が求められる局面を迎えている。
単価設定の基礎データは23年10月の公共事業労務費調査で収集。有効工事件数は9742件。有効サンプル数は7万8241人。対象51職種のうち建築ブロック工はサンプル不足で単価を設定しなかった。
技術者単価は5・5%アップ
3月1日から適用する新しい設計業務委託等技術者単価は、全20職種の単純平均で前年度より5.5%上がって日額4万6880円となった。12年連続の引き上げで、最高値を更新。2012年度単価と比較すると50.0%上昇した。
業務別の平均は設計業務(7職種)が5万6714円(前年度比5.7%上昇、12年度比47.9%上昇)、測量業務(5職種)が3万9820円(5.6%上昇、75.6%上昇)、航空・船舶関係業務(5職種)が4万3080円(6.2%上昇、42.0%上昇)、地質調査業務(3職種)が4万2033円(3.4%上昇、54.2%上昇)。
20職種のうち日額が最も高いのは設計業務の「主任技術者」の8万0200円、最も伸び率が大きいのは8.4%上がった測量業務の「測量船操縦士」だった。ほとんどの職種で単価を引き上げたが、測量業務の「測量補助員」と地質業務の「地質調査技師」の2職種は前年度の単価を下回る結果となった。
技術者単価は毎年実施している給与実態調査結果に基づいて設定。全国一律の単価として、国土交通省が発注する公共工事のコンサルタント業務や測量業務など設計業務委託の積算に用いる。
時間外労働に伴う割増賃金の算出に用いる「割増対象賃金比」は、測量業務の「測量主任技師」「測量技師補」「測量助手」の3職種、航空・船舶関係の「測量船操縦士」、地質業務の全3職種で変更となった。割増賃金は、各単価を1時間当たりの額に割り戻した上で、時間数と割増対象賃金比を掛けて算出する。