新聞記事
令和6年2月19日 建設通信新聞
建設通信新聞

全職種平均5.9%アップ
3月適用の設計労務単価
物価上昇超える伸び率

好循環実現へ賃上げ働き掛け

国土交通省は16日、2024年度公共工事設計労務単価を発表した。全国・全職種の単純平均は前年度比5.9%の上昇となり、物価上昇率(消費者物価指数)の23年平均3.2%を上回った。単価算出手法を大幅に変更した13年度以降、12年連続の引き上げとなる。例年と同様に直轄工事で3月から前倒し適用する。設計労務単価の引き上げが技能者の賃上げにつながり、それによって翌年度の設計労務単価が引き上げられる好循環の実現に向け、国交省は建設業界にこれまで以上の賃上げを強く働き掛ける考えだ。

設計業務委託等技術者単価、建築保全業務労務単価、電気通信関係技術者等単価、機械設備工事積算の標準賃金、鋼橋積算基準の直接労務単価(鋼橋製作工)と併せて発表した。

公共工事の工事費積算に使用する公共工事設計労務単価は、毎年度実施する公共事業労務費調査の結果をベースに算出し、都道府県ごとに職種別で設定している。全51職種のうち、調査で十分な有効標本数を確保できなかった建築ブロック工は定めていない。

全国・全職種の単純平均で伸び率が5%以上になるのは2年連続。加重平均値では、金額が2万3600円に上り、設計労務単価の公表を始めた1997年度以降で最高値を更新した。

現場労働者数の8割以上を占める主要12職種に限ると、単純平均の伸び率は6.2%、加重平均の金額は2万2100円だった。特殊作業員が6.2%上昇の2万5598円、普通作業員が5.5%上昇の2万1818円、軽作業員が6.3%上昇の1万6929円、とび工が6.2%上昇の2万8461円、鉄筋工が6.6%上昇の2万8352円、運転手(特殊)が6.3%上昇の2万6856円、運転手(一般)が7.2%上昇の2万3454円、型枠工が6.6%上昇の2万8891円、大工が4.9%上昇の2万7721円、左官が5.0%上昇の2万7414円、交通誘導警備員Aが6.4%上昇の1万6961円、交通誘導警備員Bが7.7%上昇の1万4909円。

国交省は、労働市場の実勢価格が上昇した要因として、斉藤鉄夫国土交通相と建設業4団体トップが申し合わせた23年技能者賃上げ目標「おおむね5%」に沿って、建設業界が賃上げに取り組んだことを第一に挙げる。デフレからの完全脱却に向け、政府全体で物価上昇に負けない賃上げを推進したことに伴う社会の賃上げ機運の高まりも追い風になったと見る。

労働市場の実勢価格上昇に加え、4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されることを踏まえて規制対応に必要な経費を3年連続で反映した。その結果、12年連続の引き上げになったとしている。

斉藤国交相は16日の会見で、物価上昇率を上回る伸び率になったことと時間外労働の上限規制適用を踏まえて単価設定したことを説明し、「建設業界に対し、時間外労働規制の導入に向けた準備を着実に進めるよう強く促すとともに、今回の単価引き上げが各社の賃上げに結び付き、次なる単価引き上げにつながる好循環を実現できるよう、各社の賃上げを強く働き掛けていく」と述べた。

政府として今国会に建設業法改正案を提出することにも触れ、「賃上げの原資となる労務費が適切に確保されるよう、労務費や資材費などの実勢に即した価格での契約締結や、資材高騰分を適切に転嫁することによる賃金へのしわ寄せ防止、ダンピング対策などを着実に推進していく」と力を込めた。