2014/9/16(火)
新聞記事
平成26年9月16日 建設通信新聞


改正品確法全面施行
課題山積の自治体対応
設計 価格競争が99%
工事 歩切り依然横行
多様な入札ほとんど導入されず




公共工事の設計から施工までの公共調達を対象に、将来にわたる担い手確保・育成と適正利潤確保を新たに発注者に求める改正公共工事品質確保促進法(品確法)など担い手3法の来年度からの全面施行へ向け、地方自治体の動向が最大の関心事になっている。設計業務では価格競争が99%に上っているほか、工事でも違法である「歩切り」が依然横行していることが理由だ。地方自治体の対応を支援する国土交通省だけでなく、学術協会や政治も地方自治体の公共調達への姿勢変化を促すため対応を始めた。

プロポーザルやコンペなど土木コンサルタントや建築設計の業務委託で浸透している、価格によらない入札・契約方式が、地方自治体ではほとんど導入されていないことが、日本学術会議土木工学・建築学委員会の分科会調査で分かった。

16日の会合で、同会議デザイン等の創造性を喚起する社会システム検討分科会(仙田満委員長)が公表する。設計業務などを価格だけの競争にしないために、会計法・地方自治法改正を求める提言根拠の1つとして提示する。

調査対象は、都道府県、東京23区、市町村合わせた1791団体が2011年から13年度の3年間に実施した土木・公園・都市計画・建築の発注方式と件数。

それによると、過去3年間でコンペを行った自治体はゼロ。プロポーザルの割合も土木・公園・都市計画・設計合わせて直近13年度で0.8%と1%にも満たなかった。特に土木設計は、国土交通省の11年度発注金額に占めるプロポーザルの割合が34%に対し、11年度の自治体発注件数に占めるプロポーザル割合は0.2%にとどまっている。金額と件数の違いで単純比較は出来ないものの、自治体は設計業務でも価格入札を最重視していることが浮き彫りになった形だ。

これまでも、建築設計団体や土木コンサルタント団体は、発注者に対し価格だけの入札によらない、コンペやプロポーザル、総合評価といった多様な選定手法の導入を求めてきた。今回の日本学術会議分科会による調査では、設計委託の大半が価格入札になっている実態が明確になっている。

「歩切りは違法だということを市町村長にはっきり伝えるべきだ」

12日、自民党公共工事品質確保に関する議員連盟の公共工事契約適正化委員会(野田毅委員長)会合で、出席議員は改正品確法基本方針と入契法適正化指針の改正内容、12月をめどに策定予定の改正品確法運用指針の検討状況を説明する国土交通省に対し、地方自治体の歩切り撤廃の実行を迫った。

自民議員が歩切り横行を問題にするのは、官積算で算出した予定価格から一定額を事前に除く歩切りによって、仮に予定価格で受注しても、適正な利益が確保できない状況が続いていたことがある。

そのため、地方の中小建設業団体などを中心に、「改正品確法の目的達成へ地方自治体では歩切り撤廃が大前提」との強い要望が国交省や地元選出議員などに寄せられていた。

一方、「物品の公共調達は安ければ安いほどいいという傾向が自治体や住民意識にあるのも事実。歩切りもその一環で首長の手柄になっているのも実態」(首長経験者の自民議員)との指摘のように、運用指針で具体的に歩切り撤廃をどう定義し書き込めば良いかという現実的課題もある。ただ、地方建設業界にとって自治体の歩切り撤廃は、改正品確法施行による新たな取り組みの前提条件ととらえる傾向は根強く、地方自治体の改正品確法への対応の焦点の1つとして関心が今後も集まるのは確実だ。